2004年4月26日


朝が来た。

一昨日の夜、翌日けんじに会えることにニヤけながら眠ったわたしは、
昨日の朝、希望に満ちて目を覚ました。
が。
今日の朝、わたしを待っていたのは孤独だった。

昨日の朝、目を覚ましたわたしが幸せ気分で布団の中を泳いでいると、
けんじからメールが届いた。
“やっと会えるね”だとか“楽しみだね”だとか、
今のわたしの気分に合致したメールを期待したわたしは、目を疑った。
『先輩が車で事故って病院に行かなきゃいけなくなったから、今日無理だ。ごめん』
まったく意味が分からなかった。
信じられなかった。
会う約束をしていたのは夜だったし、病院の面会時間だってタカが知れてる。
午前中の今、病院に行かなきゃいけなくなったって、夜までには調節できるじゃない。
メールはシカトした。
返信したら会えないことを認めてしまうような気がして、嫌だったのだ。
30分ほど経って、またメール。
『先輩の彼女が亡くなった』
思わずわたしは、
『もう終わりにしよう』
と、突拍子もない返事を送っていた。
冷静に考えれば、ひとが一人亡くなってててんてこ舞いのところにそんなウザいメールが届いたら、
わたしがけんじだったら、ウンザリして愛想を尽かしてしまっただろう。
けんじはそんなわたしに、
『やだ』だの『何言ってんだ、ばか』だのメールを返してくれてた。
わたしは声が聞きたかったのだ。
『声が聞きたい』
そうメールしたのは午後3時。
わたしは家にいたくなくて、いつけんじが突然『来て』って言っても応えられるように、
車でどんどん南下していた。
途中でゆきえが電話くれて、『帰ってきなよ』と言ってくれたので、
カシワザキで折り返すことに。
潮風公園で夕陽を見る。
女が一人で海を見てるなんて、不幸ぶりっこの極みだ。
不幸かどうかは別として、そのときのわたしは危なかった。
もしもあの時間ひとりで台所にいたら、と思うとウンザリする。
たまたまメールをくれた啓介に『飲みに行こう』と言ったら快諾してくれたので、
9時ごろ落ち合ってつぼ八に行った。
ぶっちゃけこのつぼ八で佐野くんと出会った。
しかも同じ席で。
だらだらと飲んで話して、0時半帰宅。
翌日学校なのに付き合ってくれた啓介には、毎度毎度感謝しまくりだ。

そしてまた、朝が来た。
昨日とは打って変わって、哀しい朝。
『声が聞きたい』
そんなわたしのメールは、もう16時間も抛られていた。
夢にはけんじが出てきて、まったく現実味を帯びすぎた夢で、
『もう終わりにしよ? 彼女と幸せになりなよ』
そう言うわたしに、
『んなことありっこねーだろ』
と、あの例の口調で、やや笑いながら、やや億劫そうに、言うのだ。
まったく現実味を帯びすぎた夢で、目覚めたわたしはやっぱり凹んだ。
朝起きて、泣かねばならぬ状況は久しぶり。
そこについにメールが来た。
要約するに、けんじは過労と風邪(風邪は初耳だった)で、昨日倒れたらしい。
で、今日は寝ているとのこと。
『電話してよ』
で、約2日ぶりに声を聞いた。
『お見舞いに来て』
そんなこと言われたら、わたしは行ってしまう。
ここまで楽しみにしていて、ずっと会えるために生きてきて、
昨日がダメになって落ち込んで、それが今日になって日帰りでも叶うかも知れないのだ。
嬉しくって急いでPCを立ち上げて、移動手段を考えた。
結果をメールで報告。のち、電話。
『なんかもったいなくねぇ?』
と、けんじ。
『せっかくだったらいっぱい会いたいじゃん。GWにしよ?』
『いっぱいって、回数じゃなくて時間のこと?』
こう聞いたのは、わたし。
わたしは1分でも1秒でもいいから、会いたかった。
でも、お金のこともけんじの体調のことも踏まえて、結局諦めた。
『どうしても、会いたかったんだ』
と、またも泣きそうな声のわたしに、
『それは俺だって一緒だよ』
と言ってくれた。

昨日啓介に、
『それをまるっきり信じちゃうのも問題じゃね?』
と言われた。
それ、とは、けんじが言う会えない理由(先輩の事故とその彼女の死)を指す。
啓介の意見は、わたしも常に持っているものだった。
疑いだしたらキリがないし本当は信じたいけど、
今までけんじがわたしにしてきたことを考えたら、まるっきり信じることなんて出来ないのだ。
まぁ今回のことは、先輩の彼女を死なせてまでも嘘をつく、なんて、
さすがにありえないだろうけど。

結局まだわたしには、けんじが必要だった。
いつになったら、けんじにサヨナラが言えるんだろう。
言いたい、じゃなくて、言わなくちゃ、って常に考えているけど、
まだまだ先は長そうだ。
でも切に願う。
わたしだけを見てくれるひとと幸せになりたい、と。



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