2004年5月28日


『好きなひとができたんだ』
『え?』
『・・・好きなひとが、できたんだ』
『・・・そんなことだろうと思ってたよ』
『・・・会社出たら掛け直すね』
『うん』

仕事の終わりかけ、けんじが電話してきた。
ここ2,3日ロクに話もしていなかったので、トイレでひっそり出た。
いつもと違う調子のわたしの声に、けんじは今までにないくらい心配して、
『どうした?』
を繰り返すものだから、
冒頭。

電話を切って、店頭を片付けて、池田さんもいなかったので帰ることにした。
けんじに電話。

『ついにこの日が来たか、って感じだな。
いずれは来る日だったんだし、しょうがねぇよ。
ついにお前も羽ばたいて行くんだな。
昼の電話でお前の声が違ったから、うすうす気付いてたんだよ。
よかったじゃねぇか。
俺だって、お前が思ってるより、お前のこと考えてたんだぜ?
いつかはこういう日が来るって分かってたし、
俺はいつでもお前の味方だから』

『黙れっ。ちったぁ黙ってひとの話聞けっつーことっ』
わたしの言い分も聞かずに勝手にペラペラ喋るもんだから、
それを遮るべく声を荒げた。
ら、涙が出てきた。

『トキメイタんだよ。
で、このひとのこと好きかも、って。
だけどね、やっぱりダメだった。
どっかで好きになろうとしてて、
好きとか嫌いとかって、なろうと思ってなれるもんじゃないじゃない?
だから、やっぱりダメなんだよね。
それにやっぱりわたし、けんけんが好きだもん』

泣きながら、のわたしに、
『泣くなよ』
と、けんじ。
わたしが泣くたびに聞いた、けんじのあの声、あのセリフ。

『わたしだって、本当は自分だけを好きになってくれるひとと幸せになりたいよ。
だけど、まだダメ。
けんけんの方が好きだもん』

『ごめん。
もしもわたしに好きなひとができたら、けんじどんな反応するのかなって、カマかけたんだ』
『超どきどきしたんだけど』
『これでわたしへの気持ちが分かったでしょ?(笑)』
『うん(笑)』


先週末から今日まで、サービス研修なるものがあって、
その講師をやってくれたメカニックのひとに、わたしは小さな恋をした。
研修の初日、彼が一言言葉を発した瞬間に、わたしは彼を好きになってた。
毎日毎日、彼の講習を受けるのが楽しくて嬉しくて仕方なかった。
彼に毎日提出するレポートも、彼が見ると思ったら頑張った。
真剣に彼の話を聞いて、ずっと顔を見ているものだから、
目が合う回数が誰よりも多かった・・・と自惚れていたい。
何が好きなのかと言われれば、返答に困ってしまうけれど、
失敗したときに紅くなる顔や、
あの声、真剣な目、あの笑顔、
姿勢のいい歩き方、
どれもこれも、わたしの心を動かしたのは事実だった。
今日で彼の研修が終わって、来週からは別の講師になると思うと、
ものすごい喪失感だ。
部署が違う彼とは、仕事中は滅多に会えない。
それでもしばらくはわたしの心に棲みついて、
本気で好きになりかけていた、気がする。
でもダメだった。
好きになりきれなかった。

『相手いくつ?』
『28。今年29だって』
『え、オッサンじゃねーか』
『えー、けんけんと3個しか変わらないよ?』
『んなオッサンが相手なら俺は反対するよ(笑)』

もうしばらくは、わたし羽ばたけそうにないよ。



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