2006年10月22日


覚悟を決めていたはずなのに、
衝撃が大きすぎた。
壊れそうなくらいツライ気持ち半分、
安堵の気持ち半分。
だけど努力せずに泣けてしまうのは、
やっぱり哀しい気持ちが大きいからなんでしょう。

けんけんに会った。

1年ちょいぶり。
我慢できずに、会いに行ってしまった。

20日のこと。
昼間ならけんけんが時間を作ってくれるというので、
1泊2日でナガノへ。
朝、彼氏くんに見送られながら出発して、
約3時間のドライヴ。
約束の10時30分をすぎて電話。
『今どこ?』と、けんけん。
郊外のスケート場の駐車場に来ると言うので、
駐車場で待つ。
わたしが到着するまで仕事をしていたけんけん、
仕事着のまま現れて、わたしの車へ。
『お昼どうする?』
『ねぇ、せっかくわたしがここまで会いに来たんだから、
おいしいもの食べに連れてってくれるよねぇ?』
そんなわたしを無視して、
『コンビニでいいでしょ』
『はぁ?』
『馬鹿だな、俺と食えるってのは最高じゃん』
『・・・ばっかじゃないの?』
こんな会話も久しぶり。
コンビニでお昼を買って、いつものホテルへ。
テレビを観ながら、わたしはお昼を。
けんけんは隣で電卓を叩いたりと仕事を始めたもんだから、
きちんと話ができたのは、事が済んでシャワーを浴びている最中だった。

ちなみにけんけんは1年ちょいのうちに見事に太ってた。
これ以上太ったら死ぬと思う。本気で。

『けんけんも結婚したことだし、わたしも結婚しようかなぁ』
と、いつも電話で言うセリフを吐く。
電話との違いは、けんけんの表情がきちんと見れること。
けんけんの結婚はわたしの中で確信していたことだったけど、
もしかしたら、の淡い希望を持ち続けていたのも事実。
だけど顔を見れば分かる。
そうなると、引き下がれないわたし。本当に進歩ない。
『いつ結婚したの? 正直に答えないならシャワー貸さないから』
寒がるけんけんをよそに、お湯を浴びながら問い詰める。
『いつよ?』
『お前はいつだと思う?』
『わたしはー、去年の終わりか今年の頭くらいだと思ってる』
『あー、惜しいなー』
『いつよ?』
『忘れた』
『はぁ?』
『あ、えっとー・・・2年前?』
この時点で倒れそうだった。
2年前って言ったら、わたしが卒業してナガノを離れた年だ。
『2年前のいつよ?』
『・・・10月・・・9日・・・』
しぶしぶな割にきちんと日付が出てくるところが憎たらしい。
今じゃわたしの誕生日だって憶えてないくせに。
『あぁ、そう』
バスルームを出る。
胃のあたりが泡立つような感覚。
どうしていいかわからずに、平静を装うことしかできなかった。
その後でバスルームを出たけんけんに向かって、
『子供はいつ出てきたの?』
『7月。今年の』
できちゃった婚じゃないことが、またわたしの心に刃物を刺す。
『女の子でしょ』とわたし。
『えっ、なんで?』
先月ごろ、けんけんの娘を誘拐する夢を見たばかりだ。
確信はあった。
『お前すげぇなぁ』

お互い服を着て、ソファで話す。
『わたし、電話で話す度に「結婚した?」って聞いてたよね? なのにアンタは、2年間も黙ってたわけ?』
『ぃや、黙ってるつもりもなかったし、言おうと思ってた。だけどどうしても言えなかった』
『結婚したときと子供ができたときと、チャンスは何度もあったよね? なんで言えなかったわけ?』
『わかんない。何度も言おうと思ったんだけど』
『・・・アンタ、これまで嘘ついて女騙してきたんだから、罰が当たってんのよ。肝心なとこで嘘つかずにいられなくなってるんでしょ』
『結婚決めたのは、お前が「結婚しろ」って言ったのが大きかったんだよ。だからお前はそれでも変わらないって信じてたけど、やっぱり怖かったんだ』
『わたしと会えなくなることが?』
『うん』
その一言で喜んでしまう。

整理する。
2004年3月→わたしがナガノを離れる
同年夏−秋→2人で暮らす部屋を借りる
同年10月9日→イイヅナで結婚
2005年末→けんけん独立
2006年7月20日→まいこちゃん長女出産。けんけんの立会い出産。胎児の肺に羊水が入って、危険な状態だったらしい。

携帯の待受画面はやっぱり娘の写真だった。
『子供、かわいい?』
『夜泣きするとき以外はね』
今は、まいこちゃんと子供が一緒に寝室で寝て、
けんけんは居間で寝てるらしい。

『話したらホントすっきりした』
と、いつも以上にいろんな話をしてくれた。
結婚の話は、本当に近しい友人ぐらいにしか話していないこと。
仕事仲間も知らないこと。
結婚式はまいこちゃんがどうしても挙げたがったこと。
式にわたしを呼ぼうか本気で考えたこと。
子供の名前は姓名判断だのみだったこと。
まいこちゃんの父親と同業者で毎日顔を合わせていること。
実家のネコが末期のガンらしいこと。
けんけんのお兄ちゃんがすでに結婚生活に3回以上失敗していること。
その血を分けた兄弟ゆえ、自分も離婚してしまうのでは、と不安に思っていること。

『2年間も黙ってて、苦しかったでしょう』
『すげぇ苦しかった』
『これからはちゃんと話して。次の子供ができたときとか、離婚したときとか』
『子供は当分作る気ないし、離婚したときはお前を迎えに行く時だって昔から言ってるじゃん』
待ってしまう自分は止められない。
『お前も早く結婚しろよ』
『うん。じゃぁ次は、わたしが結婚したら会おう』

冗談じゃなく、本当に愛人になってしまった。
『もしもけんけんが死んだら、まいこちゃんはわたしに知らせてくれるかな』
『携帯見て電話するんじゃねぇ? でもお前、「愛人でした」なんて絶対言うなよ。最期ぐらい花持たせてくれ』
わかってますとも。

好きだとか、何にも言ってくれなかった代わりに、
『自慢じゃないけど、嫁とペアで買ったネックレスもすぐ外したんだ』
と、わたしとペアのネックレスを大切に付けてくれていた。
わたしが昔あげたピンクのワーゲンのミニカーは、仕事の車に乗せられていた。
別れ際、車の中にあったガチャピンのぬいぐるみをくれた。
『俺だと思って。寂しがるなよ』

そのガチャピンが効いたのか、別れてからはニコニコと運転してホテルへ向かった。
だけど時間が経てば経つほど、哀しさが募ってくる。
まいこちゃんに嫉妬している自分もいる。
うらやましい。けんけんの子供が産めて。

ホテルに着いたら、りさから電話。
この日の夜は、りさと優美と会う予定。
『えりかの子供、今朝生まれたよー』
なんて偶然なんだろう。
『おめでとうー。どっちだった?』
『女の子だったよー。ねぇ、明日ヒマ? 帰る前に子供見て行かない?』
なんて偶然。
これが愛人への試練? 制裁?
翌日りさと産院に行くと、
一生懸命えりかちゃんの胸に吸い付く子供がいた。
『かわいいねぇ』
りさとりさのママ、えりかちゃんとその旦那。
本当に愛おしそうに見つめるもんだから、
苦しくて泣きそうだった。
子供ってこうやって、愛情をいっぱいもらいながら育っていくんだね。
けんけんとまいこちゃんの子供も。

どうかまいこちゃんと子供が幸せになりますように。
2人がずっとずっと幸せでいられますように。



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