2004年2月25日


昨日、弟が来た。
例の如くわたしは午前中善光寺を参拝して、
部屋に戻ってゴハンを食べ終えたところだった。
午後は弟と部屋で。
受験を翌日に控えた弟は、直前になって赤本を開いて絶句したようで、
半ば開きなおって荷物のチェックやわたしのPCのチェスをして過ごしていた。
心配性で小心者の弟は用意周到で、湿布薬やら胃腸薬まで持って来ていた。
かわいいやつ。
わたしは弟の担任や先生方に配るお土産を買いに、夕方お出かけ。
お土産やさんを物色していたら、けんじくんから電話。
『弟来た？』
『うん。今日ゴハン食べに行く？』
『いや、俺忙しいし』
『あ、そう。今日の彼女によろしくー』
『あぁ、伝えとく』
『マジで？（笑）』
『“友達がよろしくってさ”って（笑）』
『ばか。“愛人がよろしくってさ”くらいのこと言っとけ（笑）』
あっけらかん、だなぁ。なんとなく。
『どっかで鉢合わせたらどうしよう』
と、それまでに至る会話の流れは忘れてしまったけど彼が言う。
『あー、鉢合いたい！（笑）』
『鉢合っても話し掛けないでね』
『どうかなー』
『俺走って逃げるから（笑）』
『撃ち殺してやる（笑）』
どこかで鉢合いたい気持ちは大アリ。
そこでビンタの一つもくれてやりたい気持ちもあるけど、
きっとわたしは何も出来ずに固まってしまうんだろうな。
『温泉の電話した？』
『うん。予約オッケーだって』
楽しみ。

弟は翌日に控えて10時就寝。
ベッドは彼が占領。
わたしは暗くした部屋でドラマを観て、11時消灯。
佐野くんからメール。
男に安定を求めるか、リスクを犯す勇気を求めるか、という質問をされた。
『そんなん考えたことも求めたこともないなぁ。
好きになったひとなら、ついて行けるところまでついて行くと思う』
そう返事をして、暗い部屋にいたらいつの間にか寝てしまっていた。
翌日。つまり今日。
目が覚めると、昨日佐野くんからメールが届いていた。
あぁ、寝ちゃった。なんて反省しつつ読んだメールは、
わたしの答えを無視した、『眠くなってきたから寝る』と言うものだった。
そこで思い出したのが、
うちらはメールじゃすれ違うから深い話はメールじゃしない、って約束。
あの質問はそれを破られたものだったように感じてちょっと腹が立った。
それ以上に、
わたしはあぁいう、質問しっぱなしなところが嫌だ。
失礼だと思う。
わたしの答えに対する感想の一つも述べてくれたっていいのに。
滅入る。

弟は９時に受験のため出発。
わたしはその後、善光寺へ。
実際、最近の善光寺参拝は、ダイエットは二の次で弟の合格祈願のために始めたものだ。

善光寺には鳩が群がっている。
数えきれない程。
その中に白い鳩がいる。
白い鳩が善光寺に何羽いるのかはわからないけど、目立つのでよく目で追う。
わたしの散歩コースは日によって違うが、善光寺に着いての行動は大抵一緒。
参道を登って、途中のお土産屋さんでおやきを買う。
おやきやさんも何軒かあるが、通っているうちに一番好きな味を見つけた。
おやきを食べながら門を潜って、参拝。
ダイエット目的のはずなのにおやきを食べてしまうなんて、と言われそうなので言い訳すると、
散歩のときは飲み物と携帯と煙草と千円札しか持ち歩かないので、
おやきを買うのはお賽銭を作るためである。
あくまで言い訳。
参拝の後は、裏にあるベンチで一服。
時間があれば、道向うの公園で読書。
今日はベンチで一服していたら、老夫婦がとなりのベンチに座った。
夫人はパン屑を投げる。
鳩が群がってくる。
ご主人は隣で煙草に火をつける。
足元いっぱいに広がった数えきれないほどの鳩たちは、パン屑を求めて右へ左へ。
その中に白い鳩がいた。
やや遠慮がちに、群れにいるような気がした。
パン屑に群がる鳩たちの少し外側で。
投げられたパン屑まで走っても、他の鳩が一足早く食べてしまう。
なかなかパン屑を食べれずにいた。
群れから離れて羽を広げてみるその姿は、失敗を恥じて誤魔化そうとしているように見える。
誰かに似ている、そう思った。
夢中で何かに群がっている仲間を傍観して、少し蔑んで、
本当は自分だってそうしたいのに、虚栄心が強くて出来なくて。
羞恥心を、さりげない行動で誤魔化したり。
プライドばっかり高くて取っ付きにくい。
昔のわたしだった。
昔のわたし、と、今躊躇なく打った。
でも、今のわたしはどうだろう。
変わったんだろうか。
変わったような気もするけど、変わっていないような気もする。
あくせくしたり、ギスギスしたりしなくなった代わりに、無気力にも見えるマイペースさを手に入れた。
良かったんだろうか、これで。

蛇足だが、わたしは一時期けんじくんから
“ぽっぽちゃん”と愛情たっぷりに呼ばれていた。
わたしがはと胸だからである。