2004年3月29日


今日は部屋を作ろう。
段ボールを全部開けて、要るものと要らないものを分けて、
まぁ、要は住める状況にすればよいわけで。
何としても今日、終わらせねばならなかったのだ。
それは何故か。
明日はけんじに会いにナガノに行く。
どうしてもどうしても会いたくて、
明日会えなかったら、わたしも仕事が始まって、次にいつ会えるか分からない。
で、決心したのだ。
でも、癪に障るのは、
連絡を寄越さないけんじ。
日曜は例のごとく連絡なし。それは覚悟の上でしたが、
月曜の今日も連絡が来ないのはオカシイ。っていうかご立腹だ。
そんなことを考えながらの、お昼。
ゆきえから電話。
『ユニクロ行くんだけど、付き合わない？』
『あぁ、いいよ』
急いで準備して、ドライブ。
天気も良くて、もう春だ。

けんじからはお昼を過ぎても連絡が来なくて、
わたしはいらいらが募っていた。
今日仕事が終わるまで連絡が来なかったら、明日ナガノなんて行ってやらないんだ。
だって癪だもん。
どうして今日に限って。ねぇ。
ゆきえとわたしそれぞれの用事を済ませて、最後にツタヤで雑誌を買う。
立ち読み中に、やっとけんじから電話。
『明日どーする？』
『どうしようかなぁ』
『お前こっちに用事あるんだろ？　じゃぁ来たらいいじゃん』
『あぁそう。じゃぁ日帰りで帰る。あんたの仕事が終わる前に、あんたに会わないで帰るわ』
『なんだよ、お前』
『あんたが大して会いたくもなさそうだから、だったら日帰りで帰るっつってんの』
『会いたいよ、会いたい』
『よしよし』
『でもお前、金あんの？』
『ないよ』と、けろっと。
『・・・じゃぁだめじゃん』
結局お金が最大の問題。
休憩が終わったけんじくんは仕事に戻って、この件は後でまた話し合うとのこと。
お金がないのは問題だ。
ナガノに行かずとも、わたしの生活はこれから２ヶ月は厳しいのだ。
ただでさえ厳しい生活を無視して、ナガノに行くなんて、冷静に考えたら首を括るようなものだ。
それでもこの時は、会いたくて仕方なかった。
後の生活はどうにでもなると思っていた。
ゆきえには、
『行かないほうがいいと思う』
と言われた。
わたしがわたしじゃなかったら、わたしだってそう言ったと思う。
現実を無視して、何かに甘えて得る幸せなんて、他人事だったらクソクラエだ。

家に帰って、部屋の片付けの続きをした。
明日行くにせよ行かないにせよ、進めておかなくちゃ生活が成り立たない。
と、そこに仕事が終わったけんじくんから電話。
『金がなきゃなぁ。無理だろ』
『だよね・・・。わたしの交通費にゴハン代に宿泊代だもんねぇ』
『俺も金があれば出してやりたいんだけど、今700円しか持ってねぇからなぁ』
これは冗談でなく、彼の財布の中身の額らしい。
『そういえばさ、この前変な夢見たんだ』
と、わたしとまいこちゃんの立場が入れ替わる夢の話をした。
『でね、すっごく淋しくなっちゃって。なんとなく彼女の気持ちを垣間見た気分で。
軽く凹んだのよ。あーやっぱり、わたしのやってることはよくないことなんだなぁ、って』
『それでも俺はお前を好きなんだからいいじゃねーか』
『そういう問題じゃなくて、わたしはやっぱり身を引く態度に徹したほうがいいと思ったの。
簡単に会いに行くんじゃなくて』
『会いたくないの？』
『会いたいよ、すごく』
『俺だって会いたいんだよ。・・・じゃぁ、明日の朝までに俺が金を作るから』
『どうやって？』
『・・・わかんないけど。明日の朝連絡する』
変なことしなきゃいいけど。

夜、例のごとくひとりで飲んで、飲みながら『てるてる家族』の最終週のビデオを観た。
あきちゃんが旅立つシーンだとか、ラストの歌と踊りとか、なんかよくわからないけど泣けてしまった。
で、この興奮を誰かに伝えたかったんだけど、誰もわかってくれなさそうで、
そんな時思いついたのが、佐野くん。
彼は、職場の上司がお昼休み中ＮＨＫを観ていて『てるてる家族』の主題歌が頭から離れない、なんてぼやいていたのを思い出したのだ。
で、メールしたらやっぱり『てるてる』バナシで盛り上がって。
そのメールが終わってしばらくしたら、電話。
『人恋しいんだけど、５分だけ会ってくれない？』
まぁ５分なら。
が、結局２時間半に。
『俺朝型じゃん。あずみちゃんみたいな夜型人間になりたいんだよね』
なんて妙な理屈が、わたしを帰さないための遠まわしな言い訳だって気付いてたけど、
翌日ナガノに行くかもしれないわたしには正直しんどい時間で、
『そろそろおイトマしますわ』とか『今日は日が悪いから帰る』とか散々言ったのに分かってくれなくて。
自己中だ。
自分勝手だ。
結局帰宅は４時。
気分は最悪だったけど、けんじの写真を見て眠りに落ちた。