2004年2月22日ii


佐野くんが帰ったあと、
りさが電話して来た。
やっぱり泣いていた。
それでもこの前よりは落ち着いたみたいだけど、
それでも心配だ。
『私病気かな、おかしいよね』
心配。
『自分の居場所がない気がするんだ』
りさが言う。
『あずみも4月には実家に帰っちゃって、
周りの友達も就職とか学校とか進路が決まっていって、
なのに私は何にも変わらなくて、私には何もなくて』
わたしは、自分の状況が変わっても変わらないりさがいてくれることが嬉しかったのに、
そう自分本位に考えていたことが恥ずかしくなった。
『今、彼のことも信じられなくて、周りの友達でさえも信じられなくなってて』
わたしはとにかく話を聞いてあげることしかできない。
『こんな自分が嫌になる』
こんなとき、なんて言ってあげたらいいんだろう。
『だって長すぎじゃない?
去年の5月からこんななんだよ。
なんか私悪いことしたのかな。それで罰が当たってるのかな』
『りさは悪くないよ』
それはわたしが保証する。
『でも、今になってこんなこと言ったってしょうがないけど、
去年の5月の時点でもう終わりにしてた方がよかったのかな、とか思っちゃう』
そんな。
『ナガノにいるべきじゃないのかな。
今、仕事場に行けばそういう過去のことを知ってるひとたちがいて、
もちろん彼もいて、
車だって彼がいたから選んだロードスターだし、
車の中にいる豚だって彼にもらったものだし、
車で通る道、全部彼と通った道なんだよ。
ネックレスもお揃いのやつ外せないし、
どうやったって、何したって、何を見たって、全部彼に繋がっちゃう』
『・・・忘れたいの?』
『忘れたくなんてないよ』
○○したい、と、○○した方がいい、は一致しないこと。
わたしだってわかってる。
結局わたしはひたすら話を聞いてあげることしか出来なかった。

状況はひとそれぞれ違う。
それで行き着く考えはやっぱり違って、
もちろんそこにはそれぞれの性格も関係してくるんだろうけど。
りさは彼と彼の思い出から離れようとしていて、
それを聞いて、あぁ、違うなって思った。
わたしはけんじくんの思い出と離れようとはしていない。
忘れないために、努力してる。
恋の決着のつけ方は、やっぱりひとそれぞれ違う。
りさの決着のつけ方を前進だとも思わないし、
わたしのそれを後退だとも思わない。

お願いだから、りさが笑える日が来ることを願う。





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